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派遣労働者の秘密保持義務について|情報漏洩の際に罰則はある?

派遣労働者の秘密保持義務について|情報漏洩の際に罰則はある?

【基本知識】秘密保持契約の締結と秘密保持義務

ビジネスにおいて、商談や取引を開始する際に頻繁に締結されるのが「秘密保持契約」です。秘密保持契約とは、自社が持つ秘密情報を他社に開示する場合、その情報を外部に漏らさないように、秘密を保持する方法や使用目的等を定める約束のことをいいます。秘密保持契約を締結すると、情報の受領者は、秘密保持義務(労働者がその職務中あるいは企業において知り得た秘密を他に漏洩してはならない義務)を負います。

また、秘密保持契約を締結する際には「秘密保持契約書」を交わします。これは、秘密保持契約内容を記載した書類に署名・捺印をした当事者双方が、記載内容を遵守することを約束する書類です。似た言葉として「秘密保持誓約書」がありますが、意味合いが異なるので注意が必要です。これは秘密保持契約内容を記載した書類を差し出す側のみ署名・捺印をするもので、差し出す側のみが誓約書の記載内容を遵守することを約束する書類です。

※秘密保持契約は、英語で「Non Disclosure Agreement」といい、日本でも「NDA」と呼ばれることがある。

派遣労働における秘密保持義務とは


派遣労働においても秘密保持義務(労働者がその職務中あるいは企業において知り得た秘密を他に漏洩してはならない義務)が存在します。派遣は、派遣社員・派遣会社・派遣先企業の3者間で成り立っているので、義務を負う対象が少し複雑です。以下で詳しく見ていきましょう。

派遣会社には派遣先企業に対する秘密保持義務がある

派遣会社は、労働者派遣業法第24条の4により、業務上取り扱い知り得た秘密情報について、派遣先企業に対する秘密保持義務があります。そのため、派遣会社が派遣先企業の秘密情報を外部に漏らすことは、法律上の義務違反行為となります。万が一、秘密保持義務に違反したことにより情報が漏洩し、派遣先企業に損害が生じた場合は、当該秘密保持義務違反と因果関係がある範囲の損害について賠償責任を負うことになります。

派遣社員には派遣会社に対する秘密保持義務がある

派遣会社だけでなく、派遣社員にも業務上取り扱い知り得た秘密について、秘密保持義務があります。これも労働者派遣法第24条の4により定められています。注意が必要なのが、派遣社員が負う秘密保持義務は、派遣先企業ではなく派遣会社に対するものである点です。派遣社員が雇用関係にあるのは派遣会社であるため、雇用関係にない派遣先企業に対する義務は負いません。

そのため、派遣社員が派遣先企業の秘密情報を漏洩し、派遣先企業に損害が生じた場合でも、派遣先企業は派遣社員に対して直接的に損害賠償責任を追及することは原則できません。

労働者派遣契約における秘密保持義務の規定について


以下では、労働者派遣契約における秘密保持義務の規定についてご説明します。派遣社員として働き始めてから「気づかないうちに秘密保持義務が生じていた」、「法律違反をしていた」なんてことにならないよう事前に確認しておくと良いでしょう。

労働派遣契約書において秘密保持義務を規定する義務はない

労働者派遣契約について規定している労働者派遣法第26条では、労働者派遣契約で秘密保持義務を規定するとは定められていません。そのため、派遣会社・派遣先企業によっては、労働者派遣契約書に秘密保持義務を規定しない可能性もあります。

この場合、派遣会社・派遣先企業の秘密情報が派遣社員を通じて、漏洩してしまうことになりかねません。このような事態に備えて、労働者派遣契約に秘密保持に関する規定を設けるか、秘密保持誓約書の提出を求めるのが一般的です。

派遣先企業と直接結ぶ秘密保持契約には注意

派遣社員が派遣先企業と直接秘密保持契約を結ぶ際は注意が必要です。派遣社員はあくまでも派遣会社の従業員であるため、派遣先企業と直接契約書を交わすと直接雇用とみなされ、労働法上の問題となる可能性があります。万が一、派遣会社を通さずに派遣先企業から秘密保持契約を直接締結することを要求された場合は、その場で応じずに必ず派遣会社に相談をしましょう。

秘密保持義務に違反した場合に罰則はある?


もちろん秘密保持義務を厳守するのは大前提ですが、意図的ではなくても秘密情報を漏洩してしまい、秘密保持義務違反となる可能性もゼロではありません。秘密保持義務に違反した場合に罰則はあるのでしょうか?

派遣会社に損害賠償請求される可能性がある

派遣社員が秘密保持義務に違反したことにより、派遣先企業の秘密情報が漏洩し派遣先企業に損害が生じた場合、派遣先企業から派遣会社に損害賠償請求がされる可能性があります。これは、派遣会社は派遣先企業に対して秘密保持義務がある一方で、派遣社員から派遣先企業に対しては、秘密保持義務が発生していないためです。そのため、派遣社員の責任は雇用主である派遣会社が負うことになります。

派遣社員に対して罰則が科せられることもある

先述したように、派遣社員は派遣会社に対して秘密保持義務を負います。そのため、派遣社員が秘密保持義務に違反をした場合、派遣会社は該当の派遣社員を懲戒処分(企業が従業員の就業規則違反や企業秩序違反行為に対して、正式に制裁を科す処分のこと)に処することができます。ただし、懲戒処分の可否や程度については、被懲戒者と争いになるケースも多くみられます。こうした問題の発生を防ぐため、あらかじめ就業規則で明確に定めておくことが重要です。

秘密保持義務の対象となる「秘密情報」とは


秘密情報とは、一般的に「企業外に漏洩することにより企業の正当な利益や顧客からの信用を侵害する情報」と考えられていますが、法律上の明確な定義はありません。秘密情報とする情報の範囲は、それぞれの契約ごとに事前に規定するため、契約内容により秘密保持の対象である情報や内容が変わります。

◆秘密情報の例
・通信会社A社の事業計画
・証券会社B社の売上情報
・精密機器メーカーC社が開発中の製品の設計図
・食品会社D社が持つ顧客リスト

また、以下4つ内容は秘密情報の例外として規定するのが一般的です。

①情報が開示された時点において、情報受領者がすでに了知していた情報
②情報が開示された時点において、すでに公知であった情報
③情報が開示された後に情報受領者の責めに帰すべき事由によらず公知となった情報
④情報開示者に対して秘密保持義務を負わない正当な権限を有する第三者から、情報受領者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

必要な情報提供は情報漏洩とみなされないケースがある

「秘密情報」を漏洩させることは秘密保持義務違反になるとお伝えしましたが、必要な情報提供であれば情報漏洩とみなされないケースがあります。それは、弁護士への情報提供です。労働者を守るのは弁護士の仕事のひとつです。弁護士は、弁護士法第23条により、仕事上で知った秘密を第三者に漏らしてはいけない法的義務を負っています。そのため、労働者が会社でのトラブル等で弁護士に相談する過程で自社の秘密情報を開示しても、秘密保持義務違反には該当しません。

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